1998年度(コメントは講演者に書いていただいています)
◎2月 5日 伊藤 剛司(早稲田大)
「Siegel modular 関数の特殊値による単数の構成(の中間報告)」
有理数体に1の原始5乗根を添加した体のアーベル拡大におけ
る単数群を高次元虚数乗法論を用いて構成する。
今回は、5分体の上の30次拡大におけるrank59(full-rank)
の単数群がSiegel modular関数の特殊値と円単数を用いて構成
できたので、これについて話します。
◎1月29日 数理研での研究集会のため休み
◎1月22日 伊藤 崇史(中央大学)
「標数 $p$ の曲線の Galois 被覆の標数 $0$ への持ち上げについて」
局所的な Galois 被覆の持ち上げが存在すれば、
大域的な持ち上げが存在することが言える場合がある、
という Matignon 氏の結果を紹介する(予定)。
◎1月15日 休み(成人の日のため)
◎1月8日 小松 啓一(早大理工)
「On the Z_3-extension of a certain cubic cyclic field」
◎12月11日 白井 進(宮城教育大)
「p円分体の全てのZp拡大及びその最大不分岐部分拡大の
具体的構成について」
量指標としてのJacobi sumの立場(Kummer-Weil)から、
p円分体の独立な (p+1)/2 個のZp拡大及びその最大
不分岐部分拡大を、拡大の生成元の系列が分かる形で具
体的に決定する。得られた結果と Vandiver 予想との関
係についても言及する予定である。
◎12月 4日 数理研での研究集会のため休み
◎11月27日 今岡 雅文(都立大理)
「3次体の生成多項式と分岐条件」
有理数体を Q とし, E を Q 上の 2 次体とする. さらに T
を Q の有限個の primes の集合とする. このとき, E を含
む Q 上の S_3-拡大で, T に含まれる primes がすべて分岐
3 であるものに対して, その拡大を生成する 3 次多項式を
与える.
◎11月20日 相羽 明(茨城大理)
「Hayes moduleと整数環のガロア加群構造」
Kを有限体上一変数代数関数体、素点を一つ定めAをこの素点
に関する整数環とする。I,I'をI^2\in I'\in Iで同じ素因子
を持つ A のイデアルとしたとき、narrow ray class field
K(I') の整数環は拡大 K(I')/K(I) のassociated order上階
数1の自由加群である事を示す。
◎11月13日 佐々木 透(中央大学)
「志村曲線のmod$p$還元のグラフ」
判別式$d=pq$の不定符合四元数環の極大整環に対して定まる
志村曲線およびそれのinvolution$w_p$,$w_q$の作用による商
曲線の、$p$を法とする還元のグラフが$d$<300の範囲で決定
したので紹介する。
◎11月 6日 名越 弘文(慶應大学)
「The Selberg zeta functions over function fields」
一変数代数関数体上のGL_{2}の数論的部分群として、
最も分かりやすい projective line から一点を抜いたものからできるもので、
特に有限体F_{q}上での、いわゆるfull modular群やそのfinite index
subgroupを扱う。今回は 主合同部分群Γ(A),A \in F_{q}[t] について
詳しく述べる。kをF_{q}(t)の完備体とすると、Γ(A)は GL(2,k)のfinite volume
でnon-compacree X)に作用するが
その基本領域は無限グラフで、ただし、有限体積となる。
今回、Γ(A)のtrace formulaをexplicitに書き下し、それを使って
Γ(A)に対するセルバーグ・ゼータ関数をXに作用するラプラシアンの行列式表示を
得た。また、それは離散スペクトルと部分と連続スペクトルの部分からなるが
それぞれがq^{-s}の有理関数で書けることを示した。
また、Γ(A)の離散スペクトルについて、パラメータAやqを無限に飛ばしたときの
極限分布についても述べたい。
◎10月30日 菅 真紀子(お茶の水女子大)
「$\theta$-合同数と楕円曲線」
従来の合同数の概念を、1つの角の大きさが$\theta$ である
ような有理型三角形を考えることによって拡張した、$\theta$-
合同数という概念を紹介する。$\theta$-合同数の問題は、
ある種の楕円曲線のMordell-Weil群を計算することに帰着さ
れる。それらの楕円曲線について、今までに分かった事実を
いくつかあげる。特に、ある$\theta$について合同性の条件
を得るに至ったいきさつを、B.Birch の結果をもとに
Heegner pointと呼ばれる非自明な有理点を用いて簡単に説
明する。
◎10月23日 休み(数理研での解析数論の研究集会,
都立大学での橋本先生の集中講義のため)
◎10月16日 中里 肇(東京工業高等専門学校)
「楕円曲線の Mordell-Weil 群の torsion 部分について」
虚数乗法を持たない Q 上の楕円曲線 E に対して, 有限個
の素数からなる集合 S を定める. S の外でのみ分岐する
Q の meta-abel 拡大体 M に対して, Mordell-Weil 群 E(M)
の torsion 部分と E(Q) の torsion 部分の関係を調べる.
◎10月9日 加川 貴章(早大理工)
「実二次体上の楕円曲線のMordell-Weil群、整数点の計算」
実二次体 k 上至る所 good reduction を持つ楕円曲線を
決定するために、k 上定義された楕円曲線
y^2=x^3±1728ε^n の整数点を計算する. 方法は
elliptic logarithm の評価を用いる方法で, そのために
Mordell-Weil 群の計算も行う.
◎10月2日 学会のため休み
◎9月25日 山本 現(早大理工)
「$p$次巡回拡大体の円分的${\bf Z}_p$-拡大におけるイデアル
類群の単項化について」
$p$を奇素数とする。ある種の$p$次巡回拡大体のイデアル類群
の円分的${\bf Z}_p$-拡大における単項化を調べるGreenberg、
福田氏のアイデアを応用して、イデアル類群の$p$-rankがp-1
(またはそれ以下の任意の数)で岩澤不変量$\lambda_p$が0
となるものが無限個存在することを示す。
◎9月18日 市原 由美子(名古屋大学多元数理)
「The Siegel-Walfisz theorem for Rankin-Selberg L-functions
associated with two cusp forms」
保型形式の Fourier 係数の2乗平均が Rankin によって調べられた。
また、Rankin-Selberg L 関数という関数等式を持つ L 関数が導入され、
最近その L 関数についてより研究が深まったことで Perelli が
SL(2,Z) に関する cusp form f より決まる Rankin-Selberg L 関数に
ついての算術級数の素数定理のアナロジーから、合同条件つきで
f の Fourier 係数の2乗平均を求めた。
今回、SL(2,Z) に関する2つの cusp form f,g より決まる
Rankin-Selberg L 関数について zero-free region を調べ、
算術級数の素数定理のアナロジーを考えたことで、合同条件つきの
f,g の Fourier 係数の積の部分和における評価を
調べることができたので、それを紹介する。
◎ 7月10日 河本 史紀(学習院大学)
「2次体の$\mod\frak{p}$のray class fieldの2次部分拡大について」
$F$を有限次代数体、$\frak{m}$を$F$の整因子とし、$F(\frak{m})$で
$F$の$\mod\frak{m}$のray class fieldを表す。 tamely ramified
アーベル拡大$F(\frak{m})/F$はnormal integral basis (NIBと略す;
i.e., ある$F(\frak{m})$の整数$\beta$が存在して、$F(\frak{m})/F$に
おける$\beta$の共役元たちが拡大$F(\frak{m})/F$の整数基底になる)
を持つかどうかを問います。$F$が有理数体のとき、$F(\frak{m})/F$は
いつもNIBをもつことは知られています。そこで$F$が2次体のとき、
この問題を扱います。基礎体$F$が有理数体のときとは異なる答が
出てきます。$F$が実2次体か虚2次体かでも、異なる現象が出てきます。
とくに、$F=\bold{Q}(\sqrt{p})$, $p$: 奇素数、$p\equiv 1\pmod{4}$
の場合は、いろいろな状況が生じます。
◎ 7月3日 尾崎 学(早稲田大学)
「$\lambda_2=\mu_2=0$となる実二次体の構成とその応用」
$\lambda_2=\mu_2=0$となる実二次体で, その$\Z_2$-拡大に
付随する岩澤加群の2-階数が随意に大きいものを構成する.
また, この構成と岩澤の結果を組み合わせると, 単項化問題
に関する次の結果が得られる:
$k$上の適当な不分岐2次拡大で$k$の類群の2-partがすべて
単項化するような代数体$k$で, その類群の2-rankが随意に
大きいものが存在する.
◎ 6月26日 橋本 喜一朗(早稲田大学)
「Shimura's abelian surfaces and curves of genus 2」
We discuss how to find defining equations of
genus 2 curves C over Q, whose jacobian varieties are
isogenous over \bar{Q} to Shimura's abelian surfaces
A_f attached to the cusp forms of weight 2 and level
N=37,65,104,157,397,877,with Neben-type characters.
Especially for N=65 we shall give an equation of C
such that Jac(C) is isogenous over Q to A_f.
◎ 6月19日 Ralph Greenberg (Univ. Washington)
「Remarks about the $\mu$-invariant」
◎ 6月5,12日
類体論国際シンポジウムのためお休み
◎ 5月29日 A.MADRECKI (Wroclaw 工科大学)
「Stable process and Riemann Conjecture」
◎ 5月22日 Anton Deitmar (Univ. Heiderberg)
「A Lefschetz formula for arithmetic groups」
A Lefschetz formula relates the fixed point set of an
automorphism f of a space X to the action of f on some
cohomology theory over X. In the case of a manifold as
well as the case of a smooth variety over a finit field
Lefschetz formulas give meromorphic continuation of the
corresponding zeta functions. In this talk we extend this
principal to the case of arithmetic quotients of either
symmetric spaces or Bruhat-Tits buildings.
We give appropriate Lefschetz formulas and draw consequences
for geometric zeta functions. There will be a second talk
devoted to the Patterson conjecture one week later.
◎5月15日 村林 直樹(山形大学)
「閉体上の modularity から Q 上の modularity へ
--- QM 型アーベル多様体の場合」
A を Q 上定義された n 次元アーベル多様体で次の二つの
条件を満たすとする:
(1) A の Q 上定義された endomorphism algebra が
n 次の代数体 E と同型.
(2) A の全 endomorphism algebra が
E を極大部分体として含む四元数体と同型.
このような A に対して, 閉体上の modularity から Q 上
の modularity が従うことを示す.
◎5月 8日 日比野 剛士(早稲田大学)
「modular $\bf Q$-curveの構成についてPart 2」
去年の当セミナーにおいて$\bf Q$の4次拡大体上定義され
るmodulr $\bf Q$-curveの無限族の構成を紹介した. これ
らの$\bf Q$-curveの持つdegreeは$22$であったが, 今回$33$と
$46$の場合にも同様の結果を得たので紹介する. また, 結果
を得る際にmodular curve $X_0(33)$, $X_(46)$の商曲線とし
て現れる超楕円曲線の有理点を決定したのであわせて報告する.
◎5月 1日 休み
◎4月24日 金山 直樹(早稲田大学理工)
「Modular曲線 X_0(N) のHecke対応の定義多項式の計算について」
代数曲線C上の代数対応はCのヤコビ多様体Jac(C)のendomorphism
を定める。モジュラー曲線X(N)に対してHecke作要素と呼ばれる
End(Jac(X(N)))の元に対応する代数対応をHecke対応と呼ぶ。
今回はX_0(N)と呼ばれるモジュラー曲線に対してそのHecke対応を
定義する多項式の作り方とそのいくつかの計算結果を示す。
◎4月17日 寺井 伸浩(足利工大)
「不定方程式 a^x-b^y=d」
いわゆる"3n+1 conjecture"と関係する、不定方程式 2^x-3^y=d
に関するある予想(Adachi's conjecture)を、
Baker theory(the theory of linear forms in two logarithns)
を用いて示す。また、これをもっと一般的な不定方程式 a^x-b^y=d に
拡張できることも述べる。これらの結果を応用すると、従来2次体、
3次体などを用いて解かれた不定方程式 2^x-3^y-5, 3^x-5^y=2
などをコンピューターだけを用いて解くことができる。