講演者: | 河本 史紀 ( 学習院大学理学部 ) |
タイトル: | 正規整数基底と4を法とする狭義イデアル類群 |
アブストラクト: |
F を有限次代数体とする。次をみたす有限素点で分岐がある F の tamely ramified な2次拡大 K_1, K_2, K_3 を構成する: K_1/F と K_2/F は共に正規整数基底をもつが、K_3/F は正規整数基底をもたない。F の類数が奇数のとき、Artin の定理から K_3/F は相対整数基底をもつことがわかる。Hilbert-Speiser の定理によると、有理数体上のすべての tamely ramified なアーベル拡大は正規整数基底をもつのだから、この例は興味あるものと思われる。その構成は、岩手大学の尾台喜孝氏および横浜市立大学の市村文男氏との共同研究から動機付けられた。次のことがわかる。 結果1 Cl' を F の mod 4 の狭義イデアル類群とする。このとき、 Cl' が位数が3以上の元をもつなら、上のような体の組 (K_1, K_2, K_3) が無限個存在する。 したがって、Cl' が elementary abelian 2-group になるか否かを考える。K. Horie and M. Horie (Acta Arith. 1990) は、elementary abelian 2-group である狭義イデアル類群 Cl^{+} をもつ2べき次の虚アーベル体は有限個しかないことを示している。 Cl' から Cl^{+} への自然な全射準同型が存在するから、F がその型の体ならば有限個を除いて Cl' はelementary abelian 2-group にならないことがわかる。 F を2次体とする。 種の理論から Cl^{+} の2パートの情報が得られるので、Cl' が elementary abelian 2-group にならないための必要十分条件を与えることができる。次のことがわかる。 結果2 elementary abelian 2-group である Cl' をもつ虚2次体は4つしかない。 実2次体については、その体の型により必要十分条件は異なる。もし類数1をもつある型の実2次体の無限性が示されれば、elementary abelian 2-group である Cl' をもつ実2次体の無限性もわかる。 |
講演者: | 小松 啓一 ( 早稲田大学 ) |
タイトル: | CM型楕円曲線に付随したZ_p-拡大について ( 福田隆氏との共同研究 ) |
アブストラクト: | IKKSS判定法((市村・隅田)の判定法)を用いて楕円曲線のMordell-Weil rankを上から評価する。 |
講演者: | 伊藤 剛司 ( 早稲田大 ) |
タイトル: | 解析関数の特殊値で構成される代数体の単数について |
アブストラクト: | モジュラー関数の特殊値で構成される単数やStark-Shintaniの単数に関して、今まで得られた結果をまとめて話す。余裕があればこれらの岩澤理論への応用についての最近の研究についても話したいと思う。 |
講演者: | 竹内 良平 ( 東京都立大学 ) |
タイトル: | Mordell curve の mod p での巡回性について |
アブストラクト: | EをQ上定義された楕円曲線とすると、Eのp元体F_pにおける有理点の成す群E(F_p)は高々2つの巡回群の直積になることがよく知られている。そこで、1つ楕円曲線E/Qを固定し、素数pを動かすとき、どのくらいの頻度で E(F_p)は巡回群になるのか?という問題を考える。この問題に対して、Mordell curveと呼ばれる、E:y^2=x^3-a (aは整数) で定義される楕円曲線に対して、(今のところaに少し制限がつくが)頻度をexplicitに計算することができたので、それを報告する。また、今年の「代数と計算」シンポジウムの後に分かった事も話せたらと思っています。 |
講演者: | 見正 秀彦 (名古屋大学) |
タイトル: | Hecke $L$ 関数の $(m,t)$-universality theorem |
アブストラクト: |
Riemann zeta 関数に代表される一部のzeta関数は、普遍性とよばれる性質を持つ。 それは、比較的弱い条件を満たす任意の正則関数は, 一つのzeta関数の適当な垂直方向への平行移動により、コンパクト領域上一様近似できるというものである。 この講演では、代数体上のHecke L関数に対し、垂直方向への平行移動と、量指標の巾を同時に動かしたときに見られる普遍性について、結果と証明の概略を話す予定である。 |
講演者: | 相羽 明 (茨城大) |
タイトル: | On Galois module structure of a global field |
アブストラクト: | 有限体上一変数有理関数体のCarlitz加群分体の整数環のガロア加群構造について発表ことをまとめて話す。最後に新しいこととして、標数pの有限体上一変数べき級数体のpも同様のやり方でわかることを報告する。 |
講演者: | 寺井 伸浩 (足利工業大学) |
タイトル: | 指数型不定方程式 a^x-b^y=c |
アブストラクト: | a, b, cを固定された正の整数とする。このとき、不定方程式 a^x-b^y=c (*) は高々ひとつの正の整数解x>1, y>1を持つという、Pillai予想がある。a, b, cを具体的に与えたとき、(*)を解くのはBaker理論より容易である。しかし、a, b を任意に与えたとき、Pillai予想を解くのは難しい。ここでは、c=2, 4のとき Pillai予想が成り立つことを、Baker理論及びKASH, SIMATHを用いて示す。 |
講演者: | 久保寺 範和 (早稲田大学理工学研究科) |
タイトル: | レオポルト予想について |
アブストラクト: |
$p$ を素数としたとき、代数体 $k$ に関するLeopoldt予想というのは $k$ の $p$ 進regulatorが0とはならないということである。最近出版された岩澤健吉先生の全集の未発表論文の中でレオポルト予想が次の事と同値であることが示されている。 「任意の自然数$a$と$k$の任意の素イデアル${\frak q}\nmid p$に対して、$({\frak q},a)$-fieldが存在する。」 今回は上記で用いられた証明の類似をして、Leopoldt予想をみたす十分条件を与える。また、この十分条件をみたす体についての具体例も多少であるが示そうと思う。 |
講演者: | 山形 周二 (東京電機大学) |
タイトル: | p進Lie拡大での分岐群 |
アブストラクト: | 局所体のp進Lie拡大の分岐群について、分岐によるfiltrationと Lie filtrationとの関係を与えるSenの定理(1972)や関係する性質を紹介する。 |
講演者: | 尾崎 学 (島根大学) |
タイトル: | Z_p-拡大の非アーベル岩澤理論 |
アブストラクト: | 通常の代数体の岩澤理論ではZ_p-拡大体の最大不分岐アーベルp-拡大が主要な対象であるが、非アーベル岩澤理論はZ_p-拡大体 K上の最大不分岐 p-拡大 L~(K)/Kを目標とする。この講演では、岩澤類数公式の類似が、この非アーベル的な状況でも成立することと、Kが虚二次体の円分的Z_p-拡大のときのGal(L~(K)/K)の構造について述べる。 |
講演者: | Armand Brumer (Fordham Univ.) |
タイトル: | Dihedral Extensions and Curves with Real Multiplications |
講演者: | 難波 莞爾(弘前大学教育学部) |
タイトル: | 有限体上の楕円曲線と虚数乗法 |
アブストラクト: | 有理関数の合成に関する交換図式について話す。逆三角関数のn倍角公式、楕円曲線のn倍写像の全体は合成に関して可換な族をなしている。ここではn^3次の有理式であるn倍写像がn次の有理関数として合成平方根を持つ場合の具体的な例などを含め、虚数乗法などとの関連についても話したい。逆三角関数、楕円曲線のn倍公式と本質的に異なる、1変数の有理関数の合成可換図式を決定せよという問題である。 |
講演者: | 青木 美穂 (都立大学) |
タイトル: | Euler systems of Gauss sums and the plus part of ideal class groups |
アブストラクト: | ヤコビ和やガウス和の性質はイデアル類群のマイナスパートのみだけでなく、プラスパートにも情報を与える。Aを有理数体に1のp乗根を付け加えた体のイデアル類群のp-シロー部分群とすると、岩澤先生は「 A^+=0 」となる為の必要十分条件をガウス和(ヤコビ和)の p-進的な性質を使って与えた。最近では、八森氏による一般なアーベル体に対しての研究や市村先生による円分Z_p拡大上での結果が知られている。今回は、このプラスパートに対してガウス和の Euler systems を用いて得られる情報について話させて頂く。 |
講演者: | 相羽 明(茨城大学) |
タイトル: | 関数体の正規整数底について |
アブストラクト: | J.Brinkhuisは代数体の正規整数底の非存在について優れた結果をいくつも出している。彼のいくつかの結果の有限体上一変数代数関数体での類似について何年か前このセミナーで話させて頂いたことがあったが、それ以来いくらか進展があったのでそのことについて話す。 |
講演者: | 大西 良博(岩手大学) |
タイトル: |
超楕円曲線に対し一般化された等分多項式の行列式表示 ----- Frobenius-Stickelberger,Kiepert の公式の一般化 ----- |
アブストラクト: | 昨年 7 月 7 日のこのセミナーにおいて話させて いただいた内容(Preprint が http://arxiv.org/abs/math.NT/0105188 においてあります), すなはち, 楕円曲線 y^2="x の monic な 3 次式" を与へて, σ(u),x(u) をそれに付随する通常の sigma 函数,x 座標, ただし u は universal covering 上の自然な座標, とするとき,自然数 n について σ(u_0+u_1+...+u_n) ------------------------------------------ σ(u_0)^{n+1}σ(u_1)^{n+1}...σ(u_n)^{n+1} を函数 u_j ---> x(u_j) たちとそれらの(高次までの)導函数 を成分とする行列式によつて表示する等式 (Frobenius- Stickelberger の等式,これの n=1 の場合がよく知られた σ(u + v)σ(u - v) |1 x(u)| ------------------ = | | σ(u)^2σ(v)^2 |1 x(v)| です),および,これの極限として得られる n 等分多項式( n 等分点の座標を根とする多項式)の 行列式表示(Kiepert の公式)の種数 2 の場合への一般化, に引き続きつぎの3つをお話したいと存じます. (1) 上記の 2 種類の公式の種数 3 の超楕円曲線の場合への一般化. (2) 上記後者の Kiepert の公式 のあらゆる超楕円曲線への一般化 (これは,松谷茂樹氏との共同研究). また,これは一般の代数曲線についても一般化できそうなので, それについても触れたい. (3) D.G. Cantor:On the analogue of division polynomials for hyperelliptic curves, Crelle J., 447(1994)91-145 に与へられてゐる等分多項式の別の行列式表示(これは Brioschi の公式 (1864 年) の一般化)と,小生(ら)の結果 との完全な対応(松谷茂樹氏による)の解説. また,以上について,preprints http://arxiv.org/abs/math.NT/0105187 ---> (1) http://arxiv.org/abs/math.NT/0105189 ---> (2), (3) があります. |
講演者: | 金山 直樹(早稲田大学) |
タイトル: | 超楕円曲線のヤコビアンを用いた暗号の研究について |
アブストラクト: | 楕円曲線を用いた公開鍵暗号は1985年にKoblitzとMillerによって提案され,その実用性・安全性の高さが大きな注目を浴び,現在に至るまで盛んに研究されている.それでは一般の種数の代数曲線を利用した場合にはどうか,というのは自然な疑問であって,現在では超楕円曲線の場合の研究が盛んである.本講演では楕円曲線の場合の研究の説明から入り,特に種数2の曲線の場合の研究に関する紹介をしたいと思っている. |
講演者: | 鈴木 正俊 (名古屋大学多元数理科学研究科) |
タイトル: | PSL(2,O_K)に関するヘッケ作用素のトレースについて |
アブストラクト: | O_Kは類数1の虚2次体の整数環とする。PSL(2,O_K)に関するweight0の実解析的保型形式の空間でのtrace formulaをヘッケ作用素の作用も込めた形で証明する。その応用として、ヘッケ作用素のトレースがある Dirichlet 級数の極での留数として表示される事を見る。 |
講演者: | 陸名 雄一 (早稲田大学理工学研究科・学振) |
タイトル: | On generic 2-parameter families of generalized quaternion polynomials |
アブストラクト: | Linear Noether's problem を具体的に解くことによって, 一般四元数群 $Q_{2^{n+1}}$ を Galois 群に持つ多項式の generic 2-parameter family を(円分体上で)構成します. また, $Q_{2^{n+1}}$ のいくつかの正規列に対しても同様の考察をします. 関連する巡回群(by 橋本-R)及び二面体群(by 橋本-三宅-R)についての最新の結果(の一部)にも触れる予定です. |
講演者: | 水沢 靖 (早稲田大学理工学研究科) |
タイトル: | ある実2次体の円分 Z_2-拡大体の最大不分岐 2-拡大について |
アブストラクト: | 尾崎氏はGreenberg予想の一般化として、総実代数体 k の円分 Z_p-拡大上のp-類体塔のGalois群 G が、十分高次のlayerの p-類体塔のGalois群と同型であるか? という問題を挙げている。この問題に対して、p=2 で G が meta-Abel有限群である実2次体 k の例を見つけたので報告します。 |
講演者: | Mark. Dickinson (Univ. Michigan) |
タイトル: | Taylor-Wiles at 2 and icosahedral Artin representations |
アブストラクト: | In the 1920's Emil Artin conjectured that the L-function L(s,r) associated to a continuous representation r:Gal(L/K)-->GL_n(C) of the Galois group of an extension L/K of number fields is holomorphic everywhere, except possibly at s=1. I will discuss a partial proof of this conjecture in the rather special case when n=2, K=Q and r is an icosahedral (equivalently, non-solvable) odd representation. This complements results of Langlands, Tunnell et. al. (circa 1980) which gave a complete proof of the conjecture for n=2 and solvable r. (The case n=1 was proved by Artin himself). I will also explain how the Taylor-Wiles construction at the prime 2 plays a crucial role in the proof. |
講演者: | Tom Weston (Univ. Michigan) |
タイトル: | Geometric Euler systems and algebraic cycles |
アブストラクト: | Matthias Flach used the geometry of modular curves to construct a partial Euler system for the adjoint representation of the p-adic Galois representation associated to a modular form of weight two and trivial character. This Euler system has several useful applications to the deformation theory of Galois representations. In this talk we discuss the generalization of Flach's results to modular forms of higher weight and arbitrary character. We will first recall a simple formulation of the theory of Euler systems and then explain how algebraic geometry can be used to construct these Euler systems. The applications to modular forms will follow easily from these constructions applied to Kuga-Sato varieties. |
講演者: | 奥田 順一 (早稲田大学理工学研究科) |
タイトル: | 多重ゼータ値に於ける大野関係式の別証 |
アブストラクト: | 多重ゼータ値の線型関係式に大野氏による関係式がある。これは sum formula, duality formula, Hoffman's formula といった過去に発見された関係式を含む関係式の大きな系であった。この大野関係式の別証を紹介する。 |
講演者: | 足立 恒雄 (早稲田大学理工学部) |
タイトル: | 実数体上の斜体について |
アブストラクト: | Rを実数体とする。R上の有限階の多元体はハミルトンの四元数 体H=H(R)に限ることはよく知られている(フロベニウスの定理)。 そこでRが中心に含まれているという仮定をはずすとどうなる かを考える。結果は次の通り: Cを代数閉体とする。[C:R]=2なる部分体RをCの極大実体ということにする。 このとき 命題1.Rを代数閉体Cの任意の極大実体とする。 Dは斜体で、Rを含み、R上の(左)ベクトル空間として有 限次であるとする。 このとき、DはCのある極大実体R'上の四元数体H(R')であ る。 命題2.Cを代数閉体とする。 KをCの部分体とする。C/Kの超越次数が無限大ならば、互 いにK同型でないCの極大実体R’(\supset K)が無数に存在 する。 命題3.アルキメデス的実体の自己同型写像は恒等写像にか ぎる。非アルキメデス的実体の場合はこれは成り立たない。 時間が余れば、フロベニウスの定理の易しい証明を紹介する。 宣伝文句: アルチン=シュライアーの理論を知らない学生さんには良い勉 強になります。知っている人には良い復習の機会となります。 |
講演者: | 橋本喜一朗 (早稲田大学理工学部) |
タイトル: | Noether's Problem for Alternating Groups |
アブストラクト: | Let G be a transitive subgroup of S_n (the symmetric group of degree n) which acts on the function field L:=Q(x_1,..,x_n) through the permutation of the variables. Noether's Problem is to ask whether the fixed field K:=L^{G} is again a rational (i.e.purely trans.) function field, or not. This is one of the basic problems in Galois theory and has a long history, while the answer to it is known only for a few small groups. We will discuss the case for the alternating group A_n. Especially we describe a direct computational proof of the rationality for L^{A_n} for n=3,4 by giving simple(est) generators, as well as the possible generalization for n >4. |