2007 年度の内容 (コメントは講演者に書いて頂いております.)
2008 年 1 月 25 日 ( 金 )
講演者
岡野 恵司 ( 早稲田大学 )
タイトル
代数体の円分的 Zp-拡大上の最大不分岐 pro-p-拡大の可換性に関する考察
アブストラクト
p は奇素数とする.代数体の円分的 Zp-拡大について,その最大不分岐 pro p-拡大の Galois 群が可換となる条件について述べる. 前半は,有理数体上アーベルな代数体の場合と虚二次体の p 次巡回拡大の場合に 岩澤 λ-不変量や岩澤加群の構造を使って可換となるための必要条件を述べる. 後半は,虚二次体の p 次巡回拡大の場合に,有理数体からの素点の分解状況を指定して 実際に可換になるものを探す.
2008 年 1 月 18 日 ( 金 )
講演者 1
齋藤 恆和 ( 早稲田大学 )
タイトル
有限保型形式について
アブストラクト
複素上半平面の類似として,有限体の二次拡大から基礎体を引き 有限上半平面が定まる.この上の関数としてEisenstein級数を定義し, それが一般線型群の一次分数変換による作用に対して弱保型性を 満たすことがA. Terras等によって示されている. 今回,この保型形式のなす空間に対しての次元公式,Hecke作用と 隣接作用について述べる.
講演者 2
外園 創 ( 早稲田大学 )
タイトル
円の2n分体の最大実部分体の類数について
アブストラクト
円の2^n分体の最大実部分体の類数ついては奇数であることが 既に証明されており、全てのnについて、類数が1であると 予想されています。 今回はその類数が3で割り切れるか、割り切れないのか。 割り切れるのであれば、その類数はどのような条件を満たさねば ならないかについてお話しします。
講演者 3
山中 裕文 ( 早稲田大学 )
タイトル
Jacobstal Sum の性質について
アブストラクト
有限体 Fp 上の多項式 f(x) の Jacobsthal Sum をルジャンドル記号を使って Σx∈Fp(f(x)/p) と定義します。具体的な多項式としては、xe+a, x(xe+a) 及び楕円曲線を取上げ、1 つの多項式やパラメータ付きの多項式がどのような Jacobsthal Sum になっているか、関係性を満たすのかについて紹介します。
2007 年 12 月 21 日 ( 金 )
講演者
真田 ゆかり ( 津田塾大学 )
タイトル
ロジャース・ラマヌジャン関数とモックテータ関数について
アブストラクト
モックテータ関数は、ラマヌジャンがハーディへ宛てた最後の手紙に登場する。 後にラマヌジャンのロストノートブックから発見されたり、新たに定義されたりと、 現在位数3,5,6,7,8,10の6つのグループに分類されたものが 知られている。 今回の講演では、モックテータ関数とロジャース・ラマヌジャン関数との 関係を紹介するとともに、モックテータ関数の関係式についても紹介したい。 また、脇本先生によるアフィン・スーパー・リー代数の分母公式を 特殊化することで、興味深いモックテータ関数の関係式が得られたので、それも 紹介する。
2007 年 12 月 7 日 ( 金 )
講演者
河本 史紀 ( 学習院大学 )
タイトル
偶数周期の連分数と極小型実二次体
アブストラクト
本年6月15日の講演で述べた類数 1 の極小型でない実二次体は, 1 つの例外を 除くと, 51 個に限ることがわかりました. (その際定義した「周期 ell の s_0 型実二次体」を「周期 ell の極小型実二次体」に改名いたしました.) その結果, 類数 1 の実二次体を見つけるには極小型実二次体の構成方法を 探るのがよいことが確定します. 今回は, Mollin (2001) と McLaughlin (2003) が独立に取り上げている (連分数展開の)対称部分の拡張型を使って, 大きい偶数周期をもつ 極小型実二次体を構成します. しかしながら, 得られる極小型実二次体の無限族は比較的大きい類数をもちます. これは冨田耕史氏 (名城大学) との共同研究です.
2007 年 11 月 30 日 ( 金 )
講演者
許斐 豊 ( 学習院大学 )
タイトル
A_n -拡大の p -類数
アブストラクト
L/K を有限次代数体の A_n -拡大とする。素数 p に対して L の p -類群の性質を A_n の作用を通して調べる。A_n は十分に大きな群なの で、考えたい問題に対して都合のよい部分群を選ぶことができる。ここでは A_n に含まれるランク2の初等アーベル群を利用することにより L の p -類数と L/K のアンビグ p -類数の比を評価する。
2007 年 11 月 16 日 ( 金 )
講演者
原下 秀士 ( 東京大学 )
タイトル
Deligne-Lusztig varieties in the supersingular locus on the Siegel modular variety.
アブストラクト
この講演では、 正標数の Siegel modular variety(主偏極アーベル多様体のモジュライ空間)中に 非常に自然に Deligne-Lusztig 多様体が現れるというお話をしたいと思います。 より詳しく言うと、Siegel modular variety は、 シンプレクティック群のワイル群の元 $w$ によって定義される Ekedahl-Oort spatum $S_w$ によって分割されているのですが、 $S_w$ が supersingular locus に含まれる時、$S_w$ は その $w$ に関係する Deligne-Lusztig 多様体を使って 表示することができるという事実を紹介します。
2007 年 11 月 9 日 ( 金 )
講演者
Kalyan Chakraborty ( Harish-Chandra Research Institute, Allahabad, India )
タイトル
Identification of theta series and its exceptional set
アブストラクト
I will present a short account of the works related to the determination of the possible exceptions of integral quadratic forms (even, unimodular and positive definite) via the theta series associated to it.
2007 年 10 月 26 日 ( 金 )
講演者
藤井 俊 ( 慶應義塾大学 )
タイトル
A property of the p-class field tower of an algebraic number field
アブストラクト
p を素数とする。近年、代数体の円分的 Z_p 拡大上での p 類体塔のガロワ群 G の構造に関する研究が近畿大学の尾崎氏、 東京理科大の水澤氏、早稲田大学の岡野氏らによって 活発に進められている。はっきりと述べられている文献は 今のところ無いが、円分体、虚二次体などの実例から、 G は非可換自由 pro-p 群とはならないのではないかと考えられている。
本講演では、まず、p が完全分解する代数体において Z_p^d拡大の理論と p 類体塔との関連を調べ、 一般 Greenberg 予想の成立から p 類体塔のガロワ群 G が 非可換自由 pro-p 群とはならないことを紹介する。 (実際にはもっと強い主張が成り立つ) また、一般 Greenberg 予想の成立が確かめられていない 虚二次体において、G が非可換自由 pro-p 群とならない 例をいくつか紹介したい。
2007 年 10 月 19 日 ( 金 )
講演者
平之内 俊郎 ( 九州大学 )
タイトル
Smallness of fundamental groups for arithmetic schemes
(joint work with S. Harada)
アブストラクト
数論的スキーム及び有限体上の多様体の被覆に 古典的な Hermite-Minkowski の定理の様な ある種の有限性が成り立つ事を示す。 応用として 分岐制限つき基本群の mod p 表現の有限性について述べる。
2007 年 10 月 12 日 ( 金 ) «学位公聴会»
講演者
坂田 裕 ( 早稲田大学高等学院 )
タイトル
A Study on the Kohnen-Zagier Formula in the case of High Power Level and related Modular Forms
アブストラクト
本講演では整数論における半整数ウエイトの保型形式に関する問題を扱う。まず、 これまでに知られていた,平方因子を持たない奇数をレベルに持つ場合の原始形式の 保型 L-関数の中心値と、その原始形式に志村−新谷対応で対応する半整数ウエイトの 保型形式のフーリエ係数の間の具体的な関係式(コーネン・ザギヤの公式)を、本講演では 平方因子や、より高い冪の因子を持つ奇数をレベルに持つ原始形式の場合に拡張する。 原始形式のレベルが平方因子を持つ場合、対応する半整数ウエイトの保型形式は複数存在する ため、ここでは跡公式等を用いてそれら全てを決定した上で関係式を構成する。 また、この結果を基に、任意レベルのコーネン空間に属するヘッケ同時固有なカスプ新形式が、 無限個の基本判別式におけるフーリエ係数によって決まることも証明する。 さらに、半整数ウエイトの保型形式のフーリエ係数に密接に関係する保型形式(ヤコビ形式)を 組織的に構成する新方法についても提案する。
2007 年 10 月 5 日 ( 金 )
講演者
星 明考 ( 早稲田大学 )
タイトル
A geomepic framework for the subfield problem of generic polynomials via Tschirnhausen pansformation (joint work with K. Miyake)
アブストラクト
kを任意の体とする.k上 n 次生成的多項式に対して,その係数に 含まれるパラメータの体 M (⊃ k) への特殊化を考える.異なる 特殊化によって得られた2つの多項式の M 上最小分解体に対し, いつ一方が他方の部分体となるかを判定する問題を,生成的多項式 の部分体問題と呼ぶことにする.(一般の n 次に対する) 同問題への 幾何学的枠組みを,2つの多項式間のチルンハウス変換の定義体を 考察する事によって構成する.前半の議論を基にして,特に n=3 の 場合に適用した結果とその具体例について述べる.また,応用として, 幾つかの6次生成的多項式が具体的に得られる.
2007 年 9 月 28 日 ( 金 )
講演者
鎌野 健 ( 早稲田大学 )
タイトル
p進積分とBernoulli数のq類似について
アブストラクト
p進積分論において, 形式的冪級数と測度の間には 岩澤同型と呼ばれる同型対応が存在する. 遠藤幹彦氏によりこの同型は拡張され, その特殊な 場合としてVolkenborn積分が出てくることが知られている. 本講演では, この積分によりBernoulli数のq類似(q-Bernoulli数)を定義し, その母関数表示や漸化式などを導く。 さらに, Bernoulli数の分母を決定するvon Staudt-Clausenの定理の類似 について解説する。
2007 年 7 月 13 日 ( 金 )
講演者
時弘 哲治 ( 東京大学 )
タイトル
箱玉系の数理
アブストラクト
ライフゲームに代表されるセルオートマトン(CA)は、 有限個の状態のみをとるセルから構成される系であり、 離散的な時間ステップで時間発展する離散力学系である。 単純な規則によって複雑な時間発展パターンを発現し、 数値的な取り扱いも簡単であるため、化学反応、パターン 形成などの自然現象や、交通渋滞、避難経路などの社会現象の モデルとして盛んに研究されている。 しかしながら、その完全に離散的な性質のため、現象を特徴 づける数理構造を抽象することはかなり難しい。 近年、偏微分方程式など連続的な方程式から「超離散化」と 呼ばれる手法でCAを構成し、元の連続系の性質(保存量や 初期値問題の厳密解)を用いてCAを解析する研究が進んできた。 本講演では、主に「箱玉系」と呼ばれるCAについて、 「超離散化」の考え方や「結晶化」と呼ばれる格子模型からCAを 構成する手法についてお話したい。 箱玉系は有限個の玉が一定の規則で箱の中を動く単純な離散力学系であるが、 ソリトン的な性質や組合せ論的な性質を持ち、数論の未解決問題 (リーマン予想)と直接関係するなど、色々と興味深い性質を持っている。 ベーテ仮説方程式との関係やテータ関数を用いた初期値問題の 解法など箱玉系の数理的な側面についてお話したいと考えている。
2007 年 7 月 6 日 ( 金 )
講演者
岸 康弘 ( 福岡教育大学 )
タイトル
類数が5で割れるある虚2次体の無限族について
アブストラクト
与えられた奇素数に割られる類数を持つ2次体を数多く(無限に)構成する ことは、2次体論における基本的な問題の一つである。 今回、虚2次体$Q(\sqrt{-F_{50s+25}})$の類数が5で割れることが証明され たので報告する。ここで、$F_{n}$は$n$番目のフィボナッチ数を表わす。 証明方法は、上記2次体上に不分岐な5次巡回拡大を生成する多項式(有理整数 係数の$D_5$多項式)を実際に構成することによる。 また、時間があればこの形で無数の2次体が得られることも証明する。
2007 年 6 月 29 日 ( 金 )
講演者
橋本 喜一朗 ( 早稲田大学 )
タイトル
Jacobsthal Sum による素数の表現について
アブストラクト
奇素数 p が二つの平方数の和 p=a^2+b^2 に表現されるための条件は p=1 (mod 4) である, というよく知られた性質は 17 世紀半ばにフェルマーに よって発見された定理ですが, p に対してこのような a,b を求める問題は, 1907 年に Jacobsthal によって解決されました. その際用いられたがの標題の Jacobsthal Sum です. その内容, および p=1 (mod 3) の場合の類似の結果の 初等的証明の紹介と, 一般化(背景にある虚数乗法論と応用)についてお話します. この説明から判る通り, 今回の話は初心者向けの数論入門です.
2007 年 6 月 22 日 ( 金 )
講演者
立谷 洋平 ( 慶應義塾大学 )
タイトル:
Arithmetical properties of the values of q-logarithm function
アブストラクト
本講演では、対数関数のq類似のひとつ$L_q(x)$の代数的数における値の 数論的性質について解説する。 さらに最近得られたランベルト型級数の特殊値の数論的性質に関する結果を紹介 し、応用として いくつかの級数の無理性、無理測度が導かれることを述べる。
2007 年 6 月 15 日 ( 金 )
講演者
河本 史紀 ( 学習院大学 )
タイトル
連分数と s_0 型実二次体
アブストラクト
{1, \omega} を実二次体 F = Q(sqrt{d}) の標準的整数基底とする. \omega の連分数展開を使って, 「周期 ell の s_0 型実二次体」という概念を 定義する. s_0 型でない実二次体の基本単数は比較的小さいので類数が大きく なりやすいと考えられます. 数値実験では d が 5000 万の範囲で, 類数 1 の s_0 型でない実二次体は 51 個しかありません (d=3533 が最大). ですから, 類数 1 の実二次体を見つけるには s_0 型実二次体の構成方法を 探るのがよいと思われます. 講演では, 周期が 4 以下の s_0 型実二次体に ついて報告します. これは冨田耕史氏 (名城大学) との共同研究で, 「早稲田大学整数論研究集会 2005」における講演内容の続きになります.
2007 年 6 月 8 日 ( 金 )
講演者
長谷川 泰子 ( 東京大学 )
タイトル
Symmepic square L-function of a lifting associated to imaginary quadratic fields
アブストラクト
虚二次体にリフトする楕円保型形式のsymmepic square L-関数に対し,実解析的Cohen-Eisenstein級数を使ってその核関数を構成し,新しい積分表示を与える.さらにその核関数に注目することで得られた,L-関数の特殊値の公式を紹介する.
2007 年 6 月 1 日 ( 金 )
講演者
小松啓一 ( 早稲田大学 )
タイトル
代数体の最大 pro-p 拡大と generic polynomial
2007 年 5 月 18 日 ( 金 )
講演者
木田 雅成 ( 電気通信大学 )
タイトル
乗法群のヴェイユ制限による降下クンマー理論
アブストラクト
乗法群のヴェイユ制限を使って、クンマー理論の定義体を羃根のない体に下げることができる。 講演の前半ではその概要を紹介する。 (この部分は昨年末の北陸数論研究集会と内容が重なります)。 後半では、いくつかの具体的な場合に、不定方程式系をといて、クンマー理論を導くようなトーラスの自己準同型を計算する。 特に有理数体上の7次や11次の巡回拡大にクンマー理論が存在することを示すことができる。
2007 年 5 月 11 日 ( 金 )
講演者
福田 隆 ( 日本大学 )
タイトル
若い人のための計算数論入門
アブストラクト
代数体 F と有理素数 p が与えられた時、p の F における 素イデアル分解を具体的に求めることは計算数論における 基本的な課題である。F は通常、既約 monic f(X)∈Z[X] の根αを添加した体として、f(X) で与えられる。 F の整数環 O_F と Z[α] の指数が p と素である時は Dedekind の方法がよく知られているが、(O_F:Z[α]) が p で割れる時はそれほど簡単ではない。ここでは (O_F:Z[α]) が p で割れる時にも適用でき、実装が容易 だと思われる、Ore-Pohst のアルゴリズムを紹介する。
2007 年 4 月 20 日 ( 金 )
講演者
鈴木 正俊 ( 立教大学 )
タイトル
階数 3 の Weng ゼータ関数の零点について
アブストラクト
近年, L. Weng により定義されたゼータ関数の零点に関する結果について述べる. Weng のゼータ関数は van der Geer と Schoof による Dedekind ゼータ関数の表示を出発点として, 代数体 K と各自然数 r に対して定義される. 特に r=1のとき Weng のゼータ関数は K の Dedekind ゼータ関数に一致する. また Weng 自身により, 解析接続, 関数等式, 極の位置等が既に得られている. 講演者は2004年に J.C. Lagarias との共同研究により K が有理数体で r=2 の場合に Weng のゼータ関数が Riemann 予想の類似を満たす事を示した. 最近, K が有理数体で r=3 の場合にも Weng のゼータ関数が Riemann 予想の類似を満たすという結果が得られたので紹介する. 証明の概略についても言及する.
2007 年 4 月 13 日 ( 金 )
講演者
酒井 祐貴子 ( 早稲田大学 )
タイトル
Poncelet の閉形定理と実乗法を持つ超楕円曲線について
アブストラクト
Poncelet の閉形定理とヤコビ多様体が実乗法をもつ代数曲線との関係については, 20世紀前半にHumbert によりアーベル関数を用いた研究がなされていた. その後, Poncelet の閉形定理と楕円曲線の等分点の関係が明らかにされ, Mespe はこれを利用して実乗法をもつ超楕円曲線を構成している. 今回は, アーベル関数や楕円曲線, モジュラー曲線などの概念を用いることなく, Ponceletの n 角形のみから代数曲線とその上の 2 次の代数対応を 具体的に構成し, それから誘導されるヤコビ多様体の非自明な自己準同型についての 理論を紹介する. 代数対応の方程式を簡明に記述できた点が新しい結果である. 主に判別式が 5 の実乗法の場合について紹介するが, 時間に余裕が あれば最近得られた, 判別式が 8 の場合の理論についても言及する.